前編では高知固有の地形が美味しい野菜を作ってしまうメカニズムについてお話ししました。
「発見!!高知野菜(葉ニンニク)が美味しいのは農家の腕では無かった!?」前編
今回の後編では、野菜の生育に関する高知の「土」と「水」の素晴らしさについてお話ししようと思います。
まず植物が生育するための代表的な栄養素として二酸化炭素と水、その他窒素(N)、リン(P)、加里( K)があります。
もちろんそれだけでは足りず必須元素と呼ばれるカルシウム( Ca)やマンガン( Mg)などの栄養素がなんと17種も必要であり、また有用栄養素と呼ばれるシリカ(Si)などの元素も必要であることが分かってきています。
では、植物はこれらの多様な栄養素を一体どこから取り入れているのでしょうか?
植物は光合成に必要な二酸化炭素(一部水分も)を葉っぱから取り入れていますが、空気中にはそれ以外の栄養素は基本ありません。
つまり”根”しか栄養の主な入手経路は無いのです。これは人で例えるなら、たんぱく質や炭水化物や脂質、ビタミンミネラルを口から取り入れることに似ています。皮膚や髪の毛等から栄養が浸透することもありますが、メインの入手経路ではありません。
植物にとっては”口”となる”根”。その根はどこと接点を持ち栄養を得ているかというと土であり、土の中に溶けている栄養を取り込んで成長しているのです。それ以外の入手経路は無いのです。
つまり二酸化炭素以外で生育を左右するのは土であり、その栄養が欠乏無く満遍なくバランスされているかが生育の鍵となるのです。
何と!皮肉にもプレート型巨大地震が美味しさの秘密だった!?
土の大切さが認識出来たところで、高知の地質に目を向けると、高知の海側の土地は下の写真のように砂岩、泥岩、チャート、玄武岩、斑れい岩など多様な岩石がミルフィーユ状に複雑に重なり合った地層群で成り立っています。
これは太古の昔から海洋プレートが大陸プレートに沈み込む際の地震で出来た堆積物が地表に隆起したもので、特に白亜紀~古第三紀に堆積したものは”四万十帯”と呼ばれ、別名”地震発生帯の化石”とも呼ばれています。
参考:国立研究開発法人産業技術総合研究所
このように高知県の地質は多種多様な岩石で構成されているため、その分ミネラル分も多種多様に含めれており、植物にとってはミネラル欠乏を起こしにくい理想的な地質といえます。
セメント工業地域と美味しい農産物との意外な関係
また高知県西部の山に目を向けると前編でも登場した天狗高原と呼ばれる石灰岩で出来たカルスト台地があり、特に当社のある須崎市では古くから石灰岩が取れるためにセメント工業が盛んなほど。
では石灰質の多い地域で野菜を作ると、どういったメリットがあるのでしょうか?
石灰は化学式で書くとCaO(酸化カルシウム)やCaCO3(水酸化カルシウム)。
そう冒頭にも紹介したCa(カルシウム)が含まれており、植物に必要な必須元素の一つです。
量的にはそう多くは必要としませんが、 不足すると新芽の生育不良や黄化、根の伸長不良などを引き起こします。
また土のphを変える土壌改質剤として、ホームセンターや肥料販売店では店先に並ぶほど定番のミネラルです。
本来はこの石灰を買って田畑に散布し土作りをするのが通常なのですが、高知西部の土にはもともと石灰が多く含まれていることと、山から流れてくる農業用水にも石灰が多く溶け込んでいるため、当社アースエイドの農園においても石灰を散布する必要が殆どありません。
前編で紹介した高知固有の地形による理想的な日照条件と、森の有機質をふんだんに含んだ栄養豊富な水。
後編冒頭で紹介した海底から押し寄せ形成されたミネラル豊富な地質と、山から流れてくるカルシウム豊富な水。
まさに野菜を作るために神様が条件を揃えたと思えるくらいに好条件が重なっているこの土地で、さらに無農薬や化学肥料を使わずに真面目に栽培すると、いったいどこまで美味しい野菜(葉にんにく)が出来るのだろうか?
実は当社の栽培における技術確立の歴史は、この背景をきっかけとした試行実験と答え合わせの歴史でもありました。
鉄人 陳建一さんが絶賛した高知県須崎市産の葉ニンニク!!
繊細な味と香りがウリで香味野菜として嗜好度が高かった高知伝統野菜の”葉ニンニク”からその挑戦は始まりました。
葉ニンニクを選んだ理由はそのウリである味と香りが、栽培条件が変わると大きく失われ商品性が下がるからです。
良い味と香りを求めて官能評価や市場評価を元に栽培実験を4年半進めた結果、最終的に当社では生産性とコストでは不利であるものの味と安全性を優先し、化学肥料不使用、無農薬の有機栽培に至りました。
その1年後、葉ニンニクは高知県以外にも中国の四川料理でも使うと聞き、かの鉄人 陳建一シェフのもとへ。
結果は新聞にも取り上げられたほど大絶賛で喜んでくれ、早速陳さんのお店でも使って頂けることになりました。
我々がこれらの経験から学ぶことが出来たのは一にも二にも人間はたとえ高度な文明や科学技術を最大限駆使したとしても結局は”自然には勝てない”ということでした。
かく言う私も、もともと自動車の開発畑出身であるため人工的で高度な技術を最も好む類の人間だったりします。
その証拠にかつては日本植物工場学会(現:日本生物環境工学会)という所に所属し、人工的な環境でいかに美味しくて生産性の高い野菜を作るかについて3年あまり研究した経緯があります。
そこで見えてきたのは、太陽光に出来る限り近い高強度なLED照明や自然の土を出来る限り再現した培養液、植物にとって無風状態はストレスになるため、自然のゆらぎの風を再現した換気送風システムetc…
もちろんこれらの技術は植物が育ちにくい砂漠や極寒地の環境であれば大変有効でしょう。
でもそこまでしてお金も環境負荷も掛けて結局は自然を再現するのなら高知であれば “自然のままでいいじゃん!” ということに気付いたのです。
言うなれば “高知県自体が理想的な巨大植物工場” であると言っても過言ではありません。しかもこの巨大工場からは電気代やLED照明代、培養液や送風機代の請求なんてのも来ないですからね(笑)
美味しさを突き詰めていったら、山や海や川、身の回りの大自然は最大限活用する方向になり、逆に薬品等の人工的に作られたケミカルなモノは使わない方向へ。それが味だけでなく、食の安心・安全、さらには人生の幸福にも繋がる。
アースエイドの社名の由来は1つ目が大地の恵み【Earth:大地】【Aid:恵み】と、2つ目が自然との共存共栄【Earth:自然】【Aid:助け合い】、3つ目がダジャレで【Earth:土】【Aid:佐ける(たす・ける)】でmade in 土佐!
社名の由来:アースエイド公式サイト
我々はこの先も自然と人を大切に想い、健全な体と心のサポート繋がる商品やサービスを提供し続けていきたいと考えています。
乱文にも関わらず、最後までお読みくださりありがとうございました。
アースエイド 代表 嶋崎裕也
投稿者プロフィール
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株式会社アースエイド 代表取締役
特定非営利活動法人 日本綜合医学会 理事
2004年に自動車メーカーのマツダ入社。R&D部門にて開発統括業務、シャシー開発、次世代低燃費エンジン開発などに携わった後、2009年退社。
6次産業立ち上げに必要な農業技術や食品加工技術の開発、加工場建設や経営知識の習得に加えて現居住地の限界集落のブロードバンド化活動などを3年半掛けて行い、2012年に1人にて農業生産から食品加工、販売までを手掛ける「農産加工所アースエイド」を創業。
「健康的な食と文化の提供を通じて お客様に幸せを提供する」を基本理念とし、高知の伝統調味料「葉ニンニクぬた」の通年量産化に日本初で成功した事をきっかけに国内だけではなく、海外へも広めようと販促活動を行う。
現在はNPO法人日本綜合医学会の理事も務め、健康相談や食育講演活動を通じて「食の本質」を伝えることにも尽力し、ガン・糖尿病等の生活習慣病や精神疾患の患者を削減させ、医療費問題に貢献することを人生の目標としている。
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